TCFD提言に基づく情報開示
TCFD提言への賛同表明
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)は2017年にまとめられた最終報告書の中で、企業などに気候変動関連のリスク・機会について「ガバナンス」・「戦略」・「リスクマネジメント」・「指標と目標」の4項目の開示を推奨しています。
理研ビタミングループでは農産物や水産物を主要な原材料として使用しているため、気候変動への取り組みは当社グループにとって重要な課題のひとつであり、CSR活動の重点テーマ(マテリアリティ)にも「環境配慮」を掲げています。
これを踏まえ、当社は2022年4月にTCFD提言への賛同を表明し、TCFDコンソーシアムに加入しました。2022年6月の「CSRレポート2022」で初めてTCFDのフレームワークに基づいた情報開示を行っており、今後も内容の充実に取り組んでいきます。
ガバナンス
気候変動にかかわるリスクと機会、対応策については、サステナビリティ委員会の下部組織であるTCFD部会においてグループ横断的な議論を行い、必要に応じて経営会議において方針や計画についての協議を行っています。取締役会は、それらの内容について担当取締役から報告を受け、活動状況を監督しています。
戦略
当社グループは植物油脂や海藻など、さまざまな天然物を原料として、製品を製造・販売しています。植物油脂関連原料のほとんどは海外から輸入されたものを商社や油脂メーカーから購入し、当社の工場で乳化剤などの製品に加工して、お客さまにお届けしています。また、海藻関連製品の原料の多くを占める養殖わかめは、養殖期間中の天候や、海水の温度および栄養状態によって生産量が大きく変動します。このため、気候変動は事業の継続性という観点からも、重要な経営リスクであると認識しています。
2022年度に当社事業のうち、植物油脂を主要原料とし国内外で生産する「改良剤」、および海藻・ドレッシング・スープなど国内で生産する「食品」についてリスクと機会の特定を行いました。特定にあたっては、パリ協定の目標である1.5℃ /2℃シナリオと、温暖化が進行する4℃シナリオを中心に財務影響度を評価しました。その結果、移行・物理的リスクの両面で原料調達に及ぼす影響と、物理的リスクが生産拠点に及ぼす影響が大きいことがわかりました。2023年度から対応策の検討を進めており、中長期の事業戦略に反映していきます。
シナリオ分析に基づくリスクと機会の一例
分類 | 変動要因 | 事業への影響 | 影響度※ | 対応策 | 機会 | ||
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1.5℃ /2℃ |
4℃ | ||||||
移行リスク | 政策・法規制 | 炭素税の導入 | 全般的なコストの上昇 | 小 | 小 |
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技術 | 脱炭素設備・生産方法への置き換え | 生産体制の脱炭素化に向けた大規模な設備導入による設備投資費用の増加 | 中 | 小 | |||
市場 | バイオ燃料の需要拡大 | 植物油脂調達コストの上昇、代替商品開発コストの発生 | 中 | 小 |
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持続可能性を重視した顧客の購買行動 | パーム油などの認証品調達コストの上昇 | 小 | 小 |
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評判 | エシカル消費の拡大 | 持続性に配慮した製品に対応できなかった場合の売上減少 | 小 | 小 |
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物理的リスク | 気温・海水温の上昇 | 原材料の生産量減少 | 調達コストの上昇、調達先切替コストの発生、代替商品開発コストの発生 | 中 | 大 |
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水調達リスク | 生産拠点の水ストレス悪化 | 原材料調達先の操業停止、生産拠点の操業停止による売上高減少 | 小 | 小 |
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異常気象の激甚化 | 洪水・豪雨の頻度上昇 | サプライチェーンの寸断、生産拠点の操業停止による売上高減少 | 小 | 中 |
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生産拠点の固定資産への被害発生による既存資産の減損および新規資産取得に伴う再投資 | 小 | 小 |
※影響度
- 大:売上高比率10%以上、金額92.5億円~、経常利益比率30%以上、金額27億円
- 中:売上高比率5%以上10%未満、金額46.2~92.4億円、経常利益比率15%以上30%未満、金額13.5~26.9億円
- 小:売上高比率5%未満、金額~46.1億円、経常利益比率15%未満、金額~13.4億円
※2024年度業績予想数値(売上高925億円、経常利益90億円)をベースに算出
リスク管理
当社グループでは、業務執行に関連するリスクの評価、予防および発生時の対処のために、リスク管理委員会を設置しています。特定した気候変動にかかわるリスクについても全社のリスクマネジメント体制において管理しています。
指標と目標
2030年度までにグループのGHG排出量(Scope1・2)を2018年度対比で40%削減、2050年度に実質排出ゼロにするカーボンニュートラルを目指しています。
また、2023年度にScope3の算定を開始しました。排出量の多いカテゴリについて算定を進めるとともに、GHG排出量削減目標の再設定を検討していきます。