サプライチェーンマネジメント

CSR調達

理研ビタミンでは、ビジネスパートナーであるサプライヤーの皆さまとともにCSR調達を推進して、サステナブルな社会を目指していくことを目指し、「CSR調達基本方針」を制定しました。

理研ビタミン CSR調達基本方針(2020年2月制定)

理研ビタミンは「社会に対して食を通じて、健康と豊かな食生活を提供する」ことを経営理念に掲げています。
経営理念を具現化するために、サステナブルな社会を目指し、ビジネスパートナーであるサプライヤーとともにCSR調達を推進していきます。

人権・労働慣行

基本的人権を尊重し、労働環境や安全衛生に配慮した調達活動を推進します。

公正な取引・腐敗防止

国内外の法令や会社の諸規則を遵守し、高い倫理観に基づいた調達活動を行います。また、違法な政治献金や不当な利益の提供を行いません。

環境への配慮

地球環境保全の重要性を認識し、社会との共生・調和をはかる調達活動を推進します。

情報セキュリティ

調達活動において提供を受けた機密情報や個人情報は厳格に管理します。

CSR調達基本方針に基づく具体的な取り組み

CSR調達アンケートの実施

回答企業の平均得点率チャートグラフ
回答企業の平均得点率

理研ビタミンでは、「CSR調達基本方針」に基づき、サプライヤーの皆さまとサステナブルな社会の実現に向けて取り組みを進めるため、CSR調達アンケートを実施しています。2022~2023年度には、一般社団法人グローバルコンパクトネットワークジャパン(GCNJ)の「CSR調達 セルフ・アセスメント質問表」(GCNJ共通SAQ)を活用して、理研ビタミンの原料サプライヤーを対象にアンケートを実施しました。
今後も定期的にアンケートを実施してサプライチェーンにおける課題の把握に努め、サプライヤーの皆さまとともにCSR調達を推進していきます。

CSR調達アンケート

実施期間:2022~2023年度
調査対象:理研ビタミンの原料サプライヤー
回答社数:479社
カバー率:約90%(原料調達額ベース)

調達部門における教育・研修

2022年度 調達担当者向け講習

理研ビタミンでは、CSR調達を推進するため、調達業務に携わる従業員を対象に、定期的な教育・研修を実施しています。また、年に1回、本社と各工場の調達業務担当者が集まる全体会議を開催し、情報の共有やCSR調達をはじめとする知識の向上を図っています。
新たに調達業務に携わる従業員向けには、オリエンテーションを開催し、関連法令をはじめ調達業務の教育を行っています。

調達担当者向け講習

テ ー マ:下請法・独占禁止法(2022年度)
対 象 者:理研ビタミン 調達担当者
参 加 者:31名(受講率100%)

わかめ養殖の安定化へ

ゆりあげファクトリーの取り組み

わかめの養殖風景
わかめの養殖風景

日本における養殖わかめの約7割は岩手県および宮城県の沿岸で生産され、「三陸わかめ」のブランドで知られています。しかし、2023年度の三陸共販※の実績は約20,500トンと、過去最低であった2021年度の約20,000トンと同レベルであり、近年の養殖わかめ生産量は減少傾向にあります。(東日本大震災の2011年を除く)
東日本大震災以降、理研食品(理研ビタミングループ会社)では、わかめ生産性向上のための優良系統の開発や種苗生産の安定化に取り組んできました。
水産業全体の問題である、漁業者の高齢化や海の環境変化に対する課題解決の一つとして、岩手県で地元の漁業会社や漁協と連携し、遊休漁場を活用したわかめの大規模養殖を支援しています。当社がわかめの種苗や生産ノウハウを提供し、漁業会社の従業員の方々がわかめを養殖、そのわかめを当社がすべて買い取ることで、当社は原料の安定調達、漁業会社は安定した収入の確保、漁協は空いている漁場の有効活用ができます。

※全漁連による共同販売

ゆりあげファクトリーの取り組み
優良系統を選抜するための浮遊回転式養殖水槽(CFCS水槽:Circulation and Floating Cultivation System[特許第6024879 号])
優良系統を選抜するための浮遊回転式養殖水槽(CFCS水槽:Circulation and Floating Cultivation System[特許第6024879 号])

わかめ生産性向上のための優良系統の開発

「わかめの苗」ともいえる種苗の優良系統を選抜するために養殖水槽を開発し、それを用いて全国各地のわかめの特性調査と選抜試験を実施し、早生(わせ)や晩生(おくて)の優良系統を確立しました。(文部科学省・東北マリンサイエンス拠点形成事業の一環)

優良系統を活かすための“わかめの苗”ともいえる種苗生産の安定化

パナソニック(株)との共同研究によって、野菜工場の設計で用いられている複数の環境要素を考慮したシミュレーション技術を活用して種苗生産条件の最適化を行いました。

ゆりあげファクトリー外観
ゆりあげファクトリー外観

これらの研究成果をもとに、2017年7月に「ゆりあげファクトリー」(宮城県名取市)を開設し、わかめ種苗生産を開始しました。
優良種苗の安定生産により、その後の海上におけるわかめ養殖の生産性が向上することが期待でき、宮城県南三陸町のほか各地で活用いただきました。

ゆりあげファクトリーのある閖上地区では、宮城県内の仙台以南で初めてのわかめ養殖が可能であることを、生産者の皆さまと一緒に検証しました。

また、わかめ養殖では生育初期に枯死する「芽落ち」が生産量減少の原因となっていることから、種苗生産条件の最適化で得た知見を活かして種苗のストレス耐性に関する研究を継続して実施しており、養殖技術改善につながる結果が得られつつあります。
そのほか、「早生種苗」や「晩生種苗」の系統を併用する事で、これまで1回/年だったわかめの養殖を、将来的には2回/年に増やすことを目指した実証実験も行っています。

令和2年度(第21回) 民間部門農林水産研究開発功績者表彰「農林水産技術会議会長賞」を受賞(理研食品)

農林水産研究開発功績者表彰 表彰状
農林水産研究開発功績者表彰 表彰状

農林水産省と公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会では、民間が主体となって行っている農林水産業その他関連産業に関する研究開発で優れた功績をあげたものについて、「民間部門農林水産研究開発功績者表彰」にて表彰しています。
理研食品(理研ビタミングループ会社)では、優良系統を選抜するための養殖水槽を開発し、その水槽を用いて国内主要産地のわかめの中から、早生(わせ)や晩生(おくて)の優良系統を確立しました。さらに、この2系統を併用する事で、2回/年のわかめ養殖が可能であることを実証しました。また、複数の環境要素を考慮したシミュレーション技術を活用して種苗生産条件の最適化を行いました。
このことにより、種苗の安定供給が可能となったため、新たなわかめ養殖海域の開拓や生産性の向上や、将来的には漁場拡大による雇用創出および漁村振興への波及効果が期待されます。これらの「ゆりあげファクトリー」における研究成果が評価され、「農林水産技術会議会長賞」を受賞しました。

※本研究成果の一部は、理化学研究所仁科加速器科学研究センター阿部知子副センター長、株式会社SiM24兼松宏一開発部長との共同研究によって実施されました。

海藻産業の活性化へ

海藻は、日本で古くから食べられ、健康的な食品として認知されていますが、その生態の研究が進んでいるとは言えず、生産量も減少傾向にあります。理研ビタミングループでは、わかめだけでなくこんぶ、もずくなど、日常的に食べられている海藻の研究も行っており、安定的な生産を通して海藻産業の活性化に貢献していきます。

スジアオノリの陸上養殖に進出

陸前高田ベース
陸前高田ベース

理研ビタミングループでは、ゆりあげファクトリーでの取り組みをはじめ、海藻産業が抱える課題に対して多面的な研究を行ってきました。わかめで培った優良種苗の研究成果を、他の海藻にも展開しています。
スジアオノリは、青のりとして販売されている海藻の中でも、香りの強さと色の良さで高級品とされています。しかし、その生産量はこの10年で2分の1以下まで激減しており、安定的な供給が強く望まれています。理研食品(理研ビタミングループ会社)では、ゆりあげファクトリーでの研究成果を応用し、海藻の陸上養殖施設「陸前高田ベース」(岩手県陸前高田市)を開設し、現在では陸上養殖のメリットを生かし、年間を通じた適正な品質のスジアオノリ生産を実現しています。
2023年9月にはスジアオノリの陸上養殖では国内初となる、マリン・エコラベル・ジャパンの養殖認証を取得しています。

世界海藻連合(Global Seaweed Coalition)

海藻は、世界の食糧生産や気候変動の緩和、生物多様性の保全等に重要な役割を果たしており、持続可能な世界の実現に貢献できるポテンシャルを持つと注目を集めています。
2023年10月にパリで開催された、“The first ever EU Algae awareness summit”(第一回EU藻類啓発サミット)では、理研食品(理研ビタミングループ会社)の佐藤陽一が日本の海藻産業について講演し、海藻が食文化として根付いている日本の状況を発信しました。このサミットは、藻類養殖が国と地域の経済や海洋の再生などにもたらす恩恵について加盟国の行政機関や一般の方々の認識を高める第一歩となることを目指し、欧州委員会が、フランス政府と世界海藻連合(国連グローバルコンパクト)と共催したものです。

ブルーカーボンに関する共同研究

近年、海産植物や海藻の光合成能力におけるCO₂吸収効果と炭素固定・貯蔵効果によるカーボンオフセットへの活用が注目されています。特に海藻類は陸上植物に比べて炭素固定能力が高く、食糧資源としての利用だけでなく、CO₂削減に大きな期待が持たれます。海藻養殖場はブルーカーボン生態系として重要な役割を果たすと期待され、世界的に海藻養殖場の拡大を支持する声が高まっています。
理研食品(理研ビタミングループ会社)の佐藤陽一(理化学研究所 仁科加速器科学研究センター生物照射チーム客員研究員)、長崎大学海洋未来イノベーション機構のGregory N. Nishihara教授、琉球大学理学部海洋自然科学科の田中厚子准教授らの研究チームは、海水中の溶存酸素量の計測データを用いた解析手法を活用し、海藻類によるCO₂固定能力の試算に成功しました。
これらの成果は、海藻養殖のカーボンオフセット効果の定量化による海藻産業の付加価値向上と、将来的なカーボンクレジット時代に向けた新産業創出への活用が期待できます。