理研ビタミンのマテリアリティ

理研ビタミンは、2019年にCSR活動の重点テーマ(マテリアリティ)を特定しました。一方、2022年にはサステナビリティへの貢献を企業価値向上につなげることを目指し、中長期ビジョン「持続可能な社会をスペシャリティな製品とサービスで支え、成長する会社になる」を策定しました。こうした中長期の戦略と事業環境の変化を踏まえ、2024年にマテリアリティの見直しを行いました。新たに特定した8つのマテリアリティは、経営会議と取締役会の承認を経て、経営上の重点課題と位置づけています。今後は、マテリアリティへの取り組みを通して環境、社会価値の創出とともに企業価値の向上を目指していきます。

マテリアリティ 特定プロセス

STEP1 取り組むべき社会課題の把握と集約

社会要請の変化に伴い、今後取り組むべき社会課題を特定するために、SDGsや各種ガイドラインを参照して現在の社会課題や動向を整理しました。その中から、当社の事業に対して将来的にポジティブ・ネガティブ両面で影響を及ぼしうる項目を抽出し、重要度に基づいて分類したロングリストを作成しました。

STEP2 経営幹部による議論、見直し案作成

ロングリストをもとに、経営幹部へのアンケートとヒアリングを実施しました。経営の意思と現場の実情を考慮し、当社の事業特性を反映させた重要度や独自性について議論を行いました。得られた意見を踏まえて、理研ビタミンならではの視点を取り入れた見直し案を作成しました。

STEP3 外部有識者による妥当性評価

見直し案の妥当性を確認するため、第三者として2名の外部有識者にヒアリングを実施し、客観的なご意見をいただきました。

STEP4 取締役会での承認

最終化した見直し案について取締役会の承認を取得し、理研ビタミンのマテリアリティを特定しました。

マテリアリティ

マテリアリティ
領域 マテリアリティ 関連するSDGs
技術を基盤とした価値創出 研究開発による価値の創出 研究開発型企業として、持続可能な社会を支える新技術と新用途、新製品の開発を推進します。
9.4
9.5
安全で安心な製品の提供 安全で高品質な製品と、幅広いお客さまの安心につながる適切な情報を提供します。
12.8
健康と豊かな食生活への貢献 スペシャリティな製品とサービスの提供により、すべての人々の健康と豊かな食生活に貢献します。
2.2
地球環境への貢献 気候変動への対応 GHG排出量の削減や脱炭素化に向けた製品の提供により気候変動の緩和に貢献します。また、気候変動への適応に向けた技術の開発を推進します。
13.1
13.3
14.2
サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行 フードロスの削減や環境負荷低減に役立つ製品や技術により、サーキュラーエコノミーへの移行を推進します。
12.2
12.3
人と社会の
ウェルビーイング
レジリエントなサプライチェーンの構築 ステークホルダーとともに、人権、環境、生物多様性にも配慮したレジリエント(柔軟で強靱)なサプライチェーンの構築を目指します。
8.7
12.2
ダイバーシティ&インクルージョンの推進 多様性を尊重し、個々の能力を活かし伸ばすことで、持続的に成長できる企業を目指します。
5.1
5.4
5.5
8.5
10.3
安全で健康的な職場環境の整備 健康と栄養に貢献する企業として、心身ともに健康で、安心して意欲的に活躍できる安全かつ健全な環境を整備します。
3.4
8.8

外部有識者による妥当性評価

2024年5月、検討したマテリアリティの見直し案について、外部有識者による妥当性評価および社内役員との意見交換を実施しました。

理研ビタミンは非常に特徴的なビジネスを展開されており、価値創出の視点から健康価値と研究開発をつなげることができると、より独自性が高まると考えます。また、食品業界においては気候変動への適応が大きな課題であり、自然災害が激甚化してもサプライチェーンが途切れないようにしていく取り組みが必要です。ブルーカーボンの研究などもビジネスにつながる可能性があれば、打ち出すことで理研ビタミンらしさにつながります。わかめの養殖については、地域との協業を通してレジリエントなサプライチェーンにつながっており、わかめを安定的に調達できているうえ、地域に対する大きな貢献もあります。
最も重要なのはマテリアリティと事業のつながりです。次のステップでは、独自性のあるビジネスがより伝わるマテリアリティに進化させ、ビジネスとサステナビリティの関係について説明されることを期待しています。

冨田 秀実氏

LRQAサステナビリティ株式会社 代表取締役

冨田 秀実

マテリアリティ見直しのプロセスは高く評価できるものであり、整理された内容も納得感のあるものになりつつあります。理研ビタミンの独自性となっている「研究開発」や、経営理念の一つに掲げる「健康と豊かな食生活を提供する」、社会的要請の高い「安全・安心」についても盛り込まれています。その競争優位や差別化戦略が際立つマテリアリティが設定できるとよいのではないでしょうか。
一方で、世界的に関心が高い「人権」はもとより、「水資源」「生物多様性」については、先を見据えるという点でも、触れておく必要があります。 社会や環境の課題解決が大きなビジネスになりうるため、今後はリスク対応だけでなく、機会として捉え直し、事業戦略とESG経営の融合を図っていくことが理研ビタミンのビジネスにとっても好機につながると考えます。

高岡 美佳氏

立教大学 経営学部 教授・博士(経済学)

高岡 美佳

※肩書は2024年6月現在